「伝説の委員長パンチ2号」誕生秘話
 教室の窓から初秋の日差しが差し込んでいる。
そんなとある日のホームルームでのことだった。
委員長こと尾田島淳子が教壇に立っている。
尾田島「来月、我が校で学園祭が開催される。
    そこでクラスの出し物をそろそろ決めたい
    のだが、なにか意見はあるか?」
榊  「はーい。おばけ屋敷」
尾田島「却下だ」(即答)
榊  「って即答かよ! なんでだ?」
 私が怖いからだが、素直に答えるのは恥ずかしい。
さて、どう返答するかだが…おぉ、そうだ。
尾田島「暗闇に紛れて、いたずらする不届き者が
    いるからだ」
榊  「ちぇっ、こっちの行動は既に読み筋かよ〜」
尾田島「ふん。当然だ」
 ほっ、助かった。それにしても男ってやつは困った
ものだな。
榊  「じゃあどんな出し物ならOKなんだ?」
尾田島「歴史資料の展示はどうだ? 例えば新撰組とか」
太助 「お上(先生方)の受けはよさそうだけど……
    それじゃああまりおもしろくないんじゃない
    かな。学園祭ってやっぱりお客さんが楽しめて
    なんぼでしょ?」
尾田島「う、うむ。それは一利あるな……では太助、
    具体的な案はあるのか?」
太助 「たとえば……喫茶店はどうかな?」
尾田島「うむ。私は喫茶店に入ったことがないのだが、
    喫茶店とは楽しめるものなのか?」
太助 「うーん、平凡な喫茶店にすると面白味がない。
    だから動物のフォトコンテストを兼ねたペット
    写真館喫茶にしたらどうかな? 飼っている
    ペットの写真でもいいし、街で見かけた動物で
    も、動物園での写真でもいい。それを展示して
    お客さんに気に入った写真を投票してもらう。
    これならクラスのみんなが参加できるし、お客
    さんも単にお茶するだけでなく、動物の写真に
    癒されながら参加して楽しめるんじゃないかと
    思うんだ」
 ペットの写真館喫茶か。これはおもしろそうだ。
さすが太助だ。
尾田島「うむ。うちの小次郎の写真も飾れるな」
さゆり「それならたんたんやプチも参加できるわ」
尾田島「よし。それに決めた!(決定)ところで、
    喫茶店とは具体的に何をすればいいのだ?」
榊  「……」
 既に喫茶店に決められたのか。俺の野望が…しくしく。
太助 「コーヒー出したり、ケーキ出したり…でも詳しい
    ことはわからないから一度調査した方がいいかも」
尾田島「うむ。それもそうだな」
太助 「そういえば、確か華先輩が喫茶店でバイトして
    いるって言ってたっけ」
尾田島「それでは一度調査しておいた方がよいだろう。
    太助、放課後にそのお店へ案内してくれ」
太助 「へーい。俺も華先輩の真面目に働いている姿を
    見てないし、それもいいか。じゃあ、今日にでも
    早速行ってみますか」
 という訳で放課後に華先輩の働く喫茶店へ向かう尾田島
委員長と太助の二人。
太助 「2人で喫茶店に入るなんて、なんかデートみたい
    だな?」
尾田島「デ、デ、デ、デートぉ!!!!」
 し、しまった〜な、殴られる〜。
太助 「いや、あの、ほら、赤の他の人から見ればだよ
    ……ん?」
尾田島「……(真っ赤)」
太助 「あっ……(真っ赤)」
 委員長の特別な気持ちは知っている。でもその想いに
応える資格が俺には果たしてあるだろうか、つい、考え
込んでしまい答えが出ない。尾田島はいつも支えてくれ
る。かわいいしいい子だ。だからこそいい加減な気持ち
では応えられない。いろいろな意味で俺はまだまだ中途
半端だ。もっと大人になりたい、早く大人になりたい。
そうすれば進むべき道が見えてくると思う。その日まで
答えを待ってほしい。
太助 「あっー、ここだ、この喫茶店!」
 とにかくお店に着いて助かった〜。
 カラン、カラン。扉を開けて入る二人。
華先輩「お帰りなさいませ。ご主人様♪」
尾田島「……(目が点)」
太助 「……どうも(目が点)」
華先輩「やっだ〜、太助くんじゃない。お茶しに来て
    くれたの。さーこっちこっち♪」
尾田島「(小声で)喫茶店とは、随分変わった挨拶を
    するんだな」
太助 「そ、そうだな」
 白と黒を基調にした清楚な服装のメイドさんたちが
パタパタと忙しそうに店内を走り周っている。うわぁー、
ここってメイド喫茶だ。華先輩のバイト先って普通の喫
茶店じゃなくてメイド喫茶かよー。びっくりしたなぁ。
華先輩「それでは何になさいますか? ご主人様♪」
 メニューを見ていた二人。コーヒーや紅茶、そして苺
ケーキ、マロンケーキ、チョコレートケーキなどおいし
そうな品々が並んでいる。
太助 「じゃあ、ブレンドを」
尾田島「私はレモンティ」
華先輩「ブレンドとレモンティですね。それでは少々
    お待ちくださいませ。ご主人様♪」
尾田島「おい(小さい声で)、喫茶店とはお客さんを
    ご主人様と呼ぶものなのか?」
太助 「実際そう言っているし、そうなんじゃないか」
尾田島「うむ。男子の店員の姿が見えないが全て裏方
    作業か。あと喫茶店のウェイトレスはあの
    ヒラヒラした衣装(メイド服)を着なければ
    ならないものなのか?」
太助 「もしかして衣装揃えられる?」
尾田島「さすがに買い揃えるのは予算オーバーだ。
    私は……このような服を持ってないし
    (それに着るのがちょっと恥ずかしい)。
    学生服の上にエプロンではだめか?」
太助 「絶対ダメ(力強く即答)! それじゃあ全然
    喫茶店じゃない!!(力説。だって尾田島の
    メイド姿想像したら…もわもわもわ。絶対に
    見たいよ!)。そうだ! 俺、華先輩に借り
    られないか頼んでみるよ」
尾田島「そ、そうか。それは助かる」
 太助の気迫に圧倒される委員長。
太助 「華せんぱ〜い! お願いがあるんだけど……」
 ・・・数分後、商談成立! ただし、華先輩に
「借し一つね」と言われてしまった。これも委員長の
メイド姿を見られることを考えれば安いもんか、って、
これって、もしかしてというか、やっぱり。。。
華先輩「それでは、いってらっしゃいませ、ご主人様♪」
 華先輩に見送られて、喫茶店を後にする二人。お店が
視界から消えると、尾田島が話しかけてきた。
尾田島「衣装をタダで借りられてよかったな」
太助 「うん。祝日はお店が休業日だから、
    空いている衣装は全部貸してくれるって。
    当日中に返してくれれば問題ないってさ」
尾田島「ちょっと恥ずかしい気もするが、どうせやるから
    には完璧を目指したいしな」
太助 「うん、尾田島らしいね」
尾田島「あとメニューをどうするか。アイス系の飲み物は
    ある程度前日に作っておくか」
太助 「ちなみにケーキって作れるの?」
尾田島「……(うっ、作ったことがない。困ったぞ)、
    無理、でもクッキーだったら作れるぞ」
太助 「みんなで協力すればいいさ。役割分担してやろうよ」
尾田島「そうだな。太助もいろいろ手伝ってくれよ」
太助 「おう、頑張ろうな」

・・・翌日の朝、校門の前に仁王立ちする尾田島委員長の
姿があった。委員長に強制連行される太助。この数分後、
伝説の委員長パンチ2号が太助に炸裂する。

(要するに喫茶店はメイド喫茶じゃないってことがバレて
殴られたという落ちです。なむ〜)
                      完